< ローマ人への手紙 4 >

1 第二款 舊約を以て信仰に由りて義とせらるる事を證す 然れば我等、我父アブラハムは肉身上よりして何を得たりとか謂はん、 2 其はアブラハム行によりて義とせられたらんには誇る所あるべきも、神の御前には之あらざればなり。 3 蓋聖書に何とか曰へるぞ、[曰く]、「アブラハム神を信ぜり、斯て其事義として彼に歸せられたり」と。 4 抑働く人の報は、恵とせられずして負債とせらる、 5 然れど働かず、不敬者を義とし給ふ神を信仰する人に於ては、其信仰神の恩寵の規定に從ひて義として之に歸せらるるなり。 6 斯の如くダヴィドも、人が行に由らずして神より義とせらるるを福なりと云へり、 7 [曰く]、「其不義を赦され、其罪を蔽はれたる人は福なる哉、 8 罪を主の歸し給はざりし人は福なる哉」と。 9 然らば此福は、唯割禮[の人]にのみ止るか、将無割禮[の人]にも及ぶか、我等アブラハムの信仰は義として彼に歸せられたりと言ひしが、 10 其は如何にして歸せられしぞ、割禮の後か無割禮の時か、割禮の後に非ずして無割禮の時なり。 11 且割禮の印は、無割禮の時の信仰に由れる義の印證として之を受けたり。是凡て無割禮にて信仰する人の父となり、彼等にも[信仰を]義として歸せられしめん為なり。 12 又獨り割禮ある人々の父たるのみならず、我父アブラハムの無割禮の時の信仰の跡を踏む人々にも割禮の父たらん為なり。 13 蓋アブラハム又は其子孫に、世界の世嗣たるべしとの約束ありしは、律法に由るに非ず信仰の義に由れるなり。 14 若律法に由る人々にして世嗣たらば、信仰は空しくなり、約束は廃せられたるなり。 15 其は律法は怒を來し、律法なき處には違法も無ければなり。 16 然れば世嗣は信仰に由る、是かの約束が恩寵に從ひて、凡ての子孫に對して堅められん為なり。是は唯律法に由る子孫のみならず、アブラハムの信仰に由りて子孫たる人の為なり。 17 蓋録して、「我汝を立てて多くの民の父たらしめたり」とあるが如く、アブラハムは其信ぜし所の神、即ち死したる者を活かし、無きものをば恰も有るものの如くに呼び給ふ神の御前に於て、凡て我等の父たるなり。 18 彼は「汝の子孫斯の如くならん」と謂はれし儘に、希望すべくも非ざるに猶希望して、多くの民の父とならん事を信ぜり。 19 而も其信仰弱る事なく、殆百歳に及びて己が身は既に死せるが如く、サラの胎も死せるが如くなるを顧みず、 20 又神の御約束に就ても訝らず躊躇せず、却て神に光榮を歸し奉りて、 21 約し給ひし事は悉く遂げ給ふべしと、飽くまで知りて信仰を固めたり、 22 故に此事義として彼に歸せられたるなり。 23 此、「義として彼に歸せられたり」と録されたるは、唯彼の為のみならず、 24 亦我等の為なり。即ち我等も、我主イエズス、キリストを死者の中より復活せしめ給ひし神を信仰する時は、[義として]之を歸せらるべし、 25 其は彼我等が罪の為に付され、又我等が義とせられん為に復活し給ひたればなり。

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