< マタイの福音書 8 >

1 第三款 ガリレアに於る種々の奇蹟 イエズス山を下り給ひしに、群衆夥しく從ひしが、 2 折しも、一人の癩病者來り、拝して云ひけるは、主よ、思召ならば我を潔くすることを得給ふ、と。 3 イエズス、手を伸べて彼に触れ、我意なり潔くなれ、と曰ひければ、其癩病直に潔くなれり。 4 イエズス之に曰ひけるは、慎みて人に語る勿れ、但往きて己を司祭に見せ、彼等への證據として、モイゼの命ぜし禮物を献げよ、と。 5 斯てイエズスカファルナウムに入り給ひしが、百夫長近づきて、 6 願ひて云ひけるは、主よ、我僕癱瘋にて家に臥し、甚く苦しめり、と。 7 イエズス、我往きて其を醫さん、と曰ひしかば、 8 百夫長答へて云ひけるは、主よ、我は不肖にして、主の我屋根の下に入り給ふに足らず、唯一言にて命じ給へ、然らば我僕痊えん。 9 蓋我も人の権下に立つ者ながら、部下に兵卒ありて、此に往けと云へば往き、彼に來れ[と云へば]來り、又我僕に是を為せ[と云へば]為すなり、と。 10 イエズス之を聞きて感嘆し、從へる者に曰ひけるは、我誠に汝等に告ぐ、イスラエルの中にても、斯程の信仰に遇ひし事なし。 11 我汝等に告ぐ、多くの人東西より來りて、アブラハムイザアクヤコブと共に天國に坐せん、 12 然れど國の子等は外の暗に逐出されん、其處には痛哭と切歯とあらん、と。 13 斯てイエズス百夫長に向ひ、往け、汝の信ぜし如く汝に成れ、と曰ひければ僕即時に痊えたり。 14 イエズスペトロの家に入り給ひて、彼が姑の熱を病みて臥せるを見、 15 其手に触れ給ひしかば、熱其身を去り、起きて彼等に給仕したり。 16 日暮れて後、人々惡魔に憑かれたる者を多く差出ししが、イエズス惡魔を一言にて逐払い、病者をも悉く醫し給へり。 17 是預言者イザヤによりて云はれし事の成就せん為なり、曰く「彼は我等の患を受け、我等の病を負ひ給へり」と。 18 イエズス周圍に群衆の夥しきを見て、湖の彼方へ往かん事を命じ給ひしかば、 19 一人の律法學士近づきて、師よ、何處へ往き給ふとも我は從はん、と云ひしに、 20 イエズス是に曰ひけるは、狐は穴あり空の鳥は巣あり、然れど人の子は枕する處なし、と。 21 又弟子の一人、主よ、我が先往きて父を葬る事を允し給へ、と云ひしに、 22 イエズス曰ひけるは、我に從へ、死人をして其死人を葬らしめよ、と。 23 イエズス小舟に乗り給ひ、弟子等之に從ひしが、 24 折しも湖に大なる暴嵐起りて、小舟涛に蔽はるる程なるに、イエズスは眠り居給へり。 25 弟子等近づきて之を起し、主よ、我等を救ひ給へ、我等亡ぶ、と云ひければ、 26 イエズス彼等に曰ひけるは、何ぞ怖るるや、信仰薄き者よ、と。即起て風と湖とを戒め給ひしに、大凪となれり。 27 斯て人々感嘆して、是は何人ぞや、風も湖も是に從ふよ、と云へり。 28 イエズス湖の彼方なるゲラサ人の地に至り給ひしに、惡魔に憑かれたる者二人、墓より出でて迎へ來れり。豫てより其猛き事甚しく、誰も其途を過ぎ得ざる程なりしが、 29 忽叫びて云ひけるは、神の御子イエズスよ、我等と汝と何の関係かあらん、期未至らざるに、我等を苦しめんとて此處に來り給へるか、と。 30 然るに彼等を距る事遠からぬ處に、多くの豚の群物喰ひ居ければ、 31 惡魔等イエズスに願ひて云ひけるは、若我等を此處より逐払い給はば、豚の群の中に遣り給へ、と。 32 イエズス彼等に、往け、と曰ひしかば、彼等出でて豚に憑き、見る見る群皆遽しく、崖より湖に飛入りて水に死せり。 33 牧者等逃げて町に至り、一切の事と惡魔に憑かれたりし人々の事とを吹聴せしかば、 34 直に町挙りてイエズスを出迎へ、是を見るや其境を過ぎ給はん事を乞へり。

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