< 使徒の働き 8 >

1 第五 烈しき迫害起る 其日エルザレムの教會に對して大いなる迫害起り、使徒等の外は皆ユデア及びサマリアの各地方に離散せしが、 2 敬虔なる人々ステファノを葬り、彼の為に大いなる弔を為せり。 3 然てサウロは教會を荒らし、家々に入りて男女を引出し、之を付して拘留せしめつつありしが、 4 離散せる人々は行巡りて、神の御言の福音を宣傳へつつありき。 5 第一 フィリッポのサマリアに於る布教の功績 第二項 教會異邦人の中に弘まらんとす 第一款 サマリア人及びエチオピアの閹者に及ぼせる感化 然てフィリッポ、サマリアの都會に下りてキリストの事を述べければ、 6 人々心を揃へてフィリッポの云ふ所を聴きすまし、其為せる徴を見居たり。 7 即ち多くの汚鬼其憑きたる人々の中より聲高く叫びつつ出で、又癱瘋者と跛者との醫されたる者多かりければ、 8 彼市中に大いなる喜となれり。 9 爰にシモンと云へる人あり、豫て彼市中に魔術を行ひて、サマリアの人民を惑はし、自ら大人と稱し、 10 小より大に至るまで人皆之に歸服して、所謂大神力とは此人なり、と云ひ居たりしが、 11 人々の彼に歸服せるは、久く其魔術に心を奪はれたる故なりき。 12 然れどフィリッポが神の國に就て宣ぶる福音を信じて、男女共にイエズス、キリストの御名によりて洗せられければ、 13 シモン自らも信じて洗せられ、フィリッポの傍を離れず、徴と最も大いなる奇蹟との行はるるを見て驚嘆し居たり。 14 第二 サマリアに於るペトロ及びヨハネの聖役 然てエルザレムに居る使徒等、サマリア人が神の御言を承入れたるを聞き、ペトロとヨハネとを遣はしければ、 15 兩人彼處に至りて彼等の聖霊を受けん為に祈れり。 16 其は彼等、主イエズスの御名によりて洗せられしのみにて、聖霊は未だ其一人にも降り給ひし事なければなり。 17 斯て兩人信者の上に按手しければ、皆聖霊を蒙りつつありき。 18 使徒等の按手によりて聖霊の授けらるるを見るや、シモン彼等に金を差出し、 19 如何なる人に按手するも其人聖霊を蒙る様、我にも此能力を與へよ、と云ひしかば、ペトロ之に向ひて云ひけるは、 20 汝の金は汝と共に亡びよ、其は汝神の賜を金にて得らるるものと思ひたればなり。 21 汝は此事に配分なく與る所なし、其心神の御前に正しからざればなり。 22 然れば此不義より改心して神に祈れ、汝が心の此念或は赦さるる事あらん。 23 我が見る所によれば、汝は苦き胆汁と不義の縲絏との中に在ればなり、と。 24 シモン答へて云ひけるは、汝等こそ我為に主に祈りて、其語れる所を一も我に來る事なからしめよ、と。 25 斯てペトロとヨハネとは、主の御言を證し且語りて、後エルザレムに歸りしが、途次サマリア人の多くの村に福音を宣べたり。 26 第三 エチオピアの閹者の感化 然て主の使フィリッポに語りて、汝起ちて南に向ひ、エルザレムよりガザに下る道に至れ、其は寂しき道なり、と云ひしかば、 27 彼起ちて往きしに、折しも一人のエチオピア人、即ちエチオピア女王カンダケの大臣なる閹者にして悉く其寳を宰れる者、禮拝の為にエルザレムに來たりしが、 28 己が車に坐して、預言者イザヤ[の書]を読みながら歸りつつありき。 29 其時[聖]霊フィリッポに向ひ、近づきて彼車に跟け、と曰ひしかば、 30 フィリッポ走寄りて、彼が預言者イザヤ[の書]を読めるを聞き、汝其読む所を暁れりと思ふか、と云ひしに、彼、 31 我を導く者なくば争でか暁ることを得ん、と云ひて、乗りて共に坐せん事をフィリッポに乞へり。 32 然て其読みつつありし聖書の文は次の如し、「彼羊の如く屠所に引かれ、口を開かざる事、羔の其毛を剪る者の前に聲なきが如く、 33 卑しめられて裁判を奪はれたり、誰か其時代の人の處分を述ぶる事を得ん、即ち活ける者の地上より取除かれたればなり」。 34 閹者フィリッポに向ひて、請ふ、預言者の斯く云へるは誰が事ぞ、己が事か将他人の事か、と云ひければ、 35 フィリッポ口を開きて、聖書の此文を初としてイエズスの福音を宣べたり。 36 尚道を往きけるに、水ある處に至りしかば閹者、看よ、水あり、我が洗せらるるに何の障かある、と云ひしを、 37 フィリッポ、汝一心に信ぜば可かるべし、と云ひければ彼答へて、我イエズス、キリストの神の御子たる事を信ず、と云ひ、 38 命じて車を停めしめ、二人ながら水に下りてフィリッポ閹者を洗せり。 39 彼等水より上りしに、主の霊フィリッポを取去り給ひしかば、閹者は再び之を見ざりしかども、喜びつつ己が道を往き居たりき。 40 然てフィリッポはアゾトに現れ、至る處の町村に福音を宣傳へつつカイザリアに至れり。

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