< ヨハネの福音書 10 >

1 第三款 善き牧者 誠に實に汝等に告ぐ、羊の檻に入るに、門よりせずして他の處より越ゆるは、盗人なり強盗なり、 2 門より入るは羊の牧者なり。 3 門番は彼に戸を開き、羊は其聲を聴き、彼亦己が羊を一々に名指して引出す、 4 斯て其羊を出せば、彼先ちて往き羊之に從ふ、其聲を知ればなり、 5 然れども他人には從はず、却て之を避く、他人の聲を知らざればなり、と。 6 イエズス此喩を彼等に曰ひしかど、彼等は其語り給ふ所の何たるを暁らざりき。 7 然ればイエズス再び彼等に曰ひけるは、誠に實に汝等に告ぐ、我は羊の門なり、 8 已に來りし人は皆盗人、強盗にして、羊之に聴從はざりき。 9 我は門なり、人若我に由りて入らば救はれ、出入して牧場を得べし。 10 盗人の來るは盗み、殺し、亡さんとするに外ならざれども、 11 我が來れるは羊が生命を得、而も尚豊に得ん為なり。我は善き牧者なり、善き牧者は其羊の為に生命を棄つ、 12 然れども牧者に非ずして羊吾物に非ざる被雇人は、狼の來るを見れば羊を棄てて逃げ、狼は羊を奪ひ且追散す。 13 被雇人の逃ぐるは、被雇人にして羊を勞らざる故なり。 14 我は善き牧者にして我羊を知り、我羊亦我を知る、 15 恰も父我を知り給ひ、我亦父を知り奉るが如し、斯て我は我羊の為に生命を棄つ。 16 我は又此檻に属せざる他の羊を有てり、彼等をも引來らざるべからず、然て彼等我聲を聞き、斯て一の檻、一の牧者となるべし。 17 父の我を愛し給へるは、之を再び取らんが為に我生命を棄つるに因る、 18 誰も之を我より奪ふ者はあらず、我こそ自ら之を棄つるなれ。我は之を棄つるの権を有し、又再び之を取るの権を有す、是我父より受けたる命なり、と。 19 是等の談の為に、ユデア人の中に復諍論起れり、 20 其中には、彼は惡魔に憑かれて狂へるなり、汝等何ぞ之に聴くや、と云ふ人多かりしが、 21 他の人は、是惡魔に憑かれたる者の言に非ず、惡魔豈瞽者の目を明くことを得んや、と云ひ居たり。 22 第四款 イエズス奉殿記念祭に上り給ふ 然てエルザレムに奉殿記念祭行はれて、時は冬なりしが、 23 イエズス[神]殿に在りてサロモンの廊を歩み居給ふに、 24 ユデア人之を取圍みて、汝何時まで我等の心を疑惑せしむるぞ、汝若キリストならば、明白に我等に告げよ、と云ひければ、 25 イエズス彼等に答へ給ひけるは、我汝等に語れども汝等信ぜざるなり、我が父の御名を以て行へる業、是ぞ我を證明するものなるに、 26 汝等尚之を信ぜず、是我羊の數に入らざればなり。 27 我羊は我聲を聴き、我彼等を知り、彼等我に從ふ、 28 斯て我永遠の生命を彼等に與ふ、彼等長久に亡びず、誰も彼等を我手より奪はじ、 (aiōn g165, aiōnios g166) 29 之を我に賜ひたる我父は、一切に優れて偉大に在し、誰も我父の御手より之を奪ひ得る者なし、 30 我と父とは一なり、と。 31 是に於てユデア人石を取りてイエズスに擲たんとせしかば、 32 イエズス彼等に曰ひけるは、我わが父に由れる善業を多く汝等に示ししが、汝等其孰の為に我に石を擲たんとはするぞ。 33 ユデア人答へけるは、我等が汝に石を擲つは善業の為に非ず、冒涜の為、且汝が人にてありながら己を神とする故なり。 34 イエズス彼等に答へ給ひけるは、汝等の律法に録して「我言へらく、汝等は神なり」とあるに非ずや、 35 斯く神の言を告げられたる人々を神と呼びたるに、而も聖書は廃すべからず、我は神の子なりと言ひたればとて、 36 汝等は、父の聖成して世に遣はし給ひし者に向ひて、汝は冒涜すと謂ふか、 37 我もし我父の業を為さずば我を信ずること勿れ、 38 然れど我もし之を為さば、敢て我を信ぜずとも業を信ぜよ、然らば父の我に在し我の父に居る事を暁りて信ずるに至らん、と。 39 是に於て彼等イエズスを捕へんと謀れるを、彼等の手を遁れて、 40 ヨルダン[河]の彼方、ヨハネが初に洗しつつありし處に至り、其處に留り給ひしに、 41 多くの人御許に來りて、ヨハネは何の奇蹟をも行はざりしかど、 42 此人に就きて告げし事は悉く眞なりき、と云ひつつイエズスを信仰せる者多かりき。

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